らぷらた音楽雑記帳50*西村秀人・南米音楽サイト『カフェ・デ・パンチート』

HOME > LaPlata50

laplatazakki050_2.jpglaplatazakki050.jpg

らぷらた音楽雑記帳

#050 解散してなお、輝き続けるフォルクローレ・コーラスの最高峰:ロス・チャルチャレーロス全集

2005.03.02

 最近RCAビクトルは歴史的録音のアンソロジーをシリーズで続けてリリースしている。すでにタンゴのアニバル・トロイロとロベルト・ゴジェネチェの全集が発売されているが、今度はアルゼンチン・フォルクローレを代表する人気コーラス・グループ、ロス・チャルチャレーロスの全アルバムがCD化された。
1956年に出された25センチ盤2枚を筆頭に、1986年のRCA専属時最後のアルバムまで全35枚が一気に発売された。今のところバラ売りだがいずれボックスセットも登場すると予告されている。いずれにしろ大変な量だ。単純に計算しても1日1曲聞いていっても1年以上かかる。(そんな聞き方する人はいないだろうが)
チャルチャレーロスはRCAを離れた頃からやや低迷していたが、1990年代末から不死鳥のごとく復活、充実したアルバムを次々と発表するが、「あまりに多くのツアーに疲れた」との理由で2002年にラスト・ツアーを行い解散した。解散前後もRCA時代の録音はさまざまな形でCD化されたが、今回のアルバム単位でのリリースはチャルチャレーロスの歴史的変遷を知るのに好適だ。まだ全部聞いたわけではないが、個人的に気に入ったアルバムを挙げておこう。
まずは何よりも挙げたいのは初々しいファーストLPにボーナス4曲を加えた"Los exitos de Los Charchaleros Vol.1"。1953~54年の録音で、記念すべきファーストLPの第1曲目はクチ・レギサモン作のサンバ「私は泣くだろう」(ジョラレー)だった。エルネスト・カベサ参加前の最初期のメンバーによる録音も3曲含まれている。
その他も素晴らしいが、現在はヨーロッパで活躍するバンドネオンの名手ディノ・サルーシが参加した1972年の2枚 "La cerrillana" "Quiero nombrar a mi pago"もチャルチャのコーラスとバンドネオンのコンビネーションが異色で面白い。翌73年のルナ・パークにおけるライヴ盤 "En vivo - Luna Park 1973" もライヴならではの楽しさ。かつてのメンバーを迎えたトラックもあり、それまでのヒット曲を中心にたっぷり聞かせてくれる。LP2枚組をCD1枚にまとめた徳用盤でもある。1982年の "A Latinoamerica"はタイトル通り「ニッケの花」「素焼きのかめ」「ラス・マニャニータス」「人生よありがとう」「バイーア」など中南米の名曲を集めている(「ニッケの花」には作者チャブーカ・グランダがゲスト参加)。さらにこのCDで面白いのは収録曲のうち3曲のカラオケが収録されていること。頑張って名曲に挑戦してみるのもいいだろう。
その他のCDにもおまけのトラックがあったり、コンピューターで見られる写真などのボーナスを収録している。 解散前後にやたらと新旧録音がたくさん発売されてやや食傷気味だったのだが、こうして間をおいてオリジナルをじっくり聞くとあらためてその実力に納得させられる。フォルクローレのコーラス・グループは星の数ほどあっても、これだけオーソドックスで、なおかつ魅力的なグループというのはそうはいないのだ。
文:西村秀人