らぷらた音楽雑記帳48*西村秀人・南米音楽サイト『カフェ・デ・パンチート』

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らぷらた音楽雑記帳

#048 チャマメの未来を明るくする若者たち:ロス・アロンシートス

2004.11.16

CD:M&M GK38278 Los origenes / Los Alonsitos 

ロス・アロンシートスのCDを最初に聞いたのは5、6年前だっただろうか。たぶん EMI 8232902 "Un chamame y un carnaval" を耳にした時だったと思う。特に先入観も事前情報もなく、単に「チャマメの新しいグループ」として、それほど大きな期待もなくそのCDをプレイヤーに入れたのだったが、数曲聞いたところで「これは何か違う、やけに楽しいな」と思い始めた。しかしその「違い」が何であるのかはすぐにはわからなかった。ドラムやベースが入ってはいるが、そういうサウンドからくる違いではなかった。一言で言えばそこに「若さ」を感じたのである。
「クアルテート・サンタ・アナ」「トランシト・ココマローラ」「タラゴー・ロス」といいったチャマメの「古典」に属する古い録音に聞かれるいぶし銀のような味わいとは異なる、躍動感にあふれた、楽しい音なのであった。これが若手のコーラス・グループだったりすると、若々しい反面、コマーシャリズムの影を強く感じさせる要素が強くなったりするのだが、幸か不幸かサウンド面では非常に保守的なチャマメ界だったからこそ、すでに確立された枠組みの中で、自然に若さが表ににじみ出てきたのではないかと思う。チャマメとにぎやかなカーニバルのイメージを結びつけたこの1998年の傑作アルバムは、現在までに 20000枚を売り上げる大ヒットとなったそうだ。
その後アロンシートスは1999年にアルバム"Dejate querer"を出し、そして今回のアルバム "Los origenes"は、タイトル通り、チャマメの古典ばかりを特集しているのである。
結成は意外と古く1980年代半ばらしい。1991年と92年のコスキン祭で入賞、初アルバムは1997年。コンサート活動に主眼をおいた地道な活動の期間はかなり長かったようである。途中でメンバーの交代があったかどうかは定かでないが、現在のメンバーはアリエル・バエス(3列アコーディオン、ボーカル)、マルコ・ロセリ・マフル(ピアノ式アコーディオン)、ルイス・フェルナンド・モウリン(ギター、ボーカル)、マルセロ・ロセリ・マフル(ギター、ボーカル)の4人。イニシャルまで同じのマルコとマルセロはどう考えても兄弟だろう。ドラムとエレキベースはCDには必ず入っているがレギュラー・メンバーには数えられていない。
今回のチャマメ・クラシックスにはココマローラの大名曲「キロメトロ11」で始まり、エラディオ・マルティネスの「ルセリート・アルバ」「アー・ミ・コリエンテス・ポラー」、チョロ・アギーレの大ヒット「リオ・マンソ」、ラモン・アジャラの美しい名作「美しいポサーダス娘」なども含まれて入るが、ただ有名曲を選んだのではなく、有名作曲家のちょっと渋めの作品を選んでいるところが面白い。ジャケットにはそれぞれの曲が著作権協会(SADAIC)に登録された年号が記してあり、一番古いのがカステジョン=サンチェス作の「カブラル軍曹」で1938年、マウリシオ・カルドーソ・オカンポの「ホセフィーナ」がそれに継ぐ1939年、あとは1940年代4曲、1950年代3曲、1960年代2曲、1970年代1曲、 1980年代1曲という構成。曲の新旧には関係なく、いずれも彼ららしい、力強く楽しいサウンドに仕上がっている。
でも昔の曲ならではの良さもしっかり伝わってくるし、これはチャマメをはじめて聞く人にもいいかもしれない。
チャマメにもいろいろな試みをする偉大なアーティストたちは少なくないが、自然体からにじみでてくる「現代色」というのもまた魅力的なものだ。
文:西村秀人