らぷらた音楽雑記帳25*西村秀人・南米音楽サイト『カフェ・デ・パンチート』

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らぷらた音楽雑記帳

#025 近頃気になるタンゴ界の女性アーティスト:
ソニア・ポセッティ

2003.11.13

CD:EPSA 0345-02 "Mano de obra / SONIA POSSETTI QUINTETO" (2003) 

タンゴの歴史の中で「女性」は特別な存在だった。歌のタンゴ創世記から歌手という分野では非常に多くの逸材を排出してきたが、その反面、演奏家の方では極端に少ない。 女性演奏家の演奏家の先駆者として知られているのは1920年代前半に自己の楽団を率いながらも1925年に25歳の若さで世を去った伝説のバンドネオン奏者パキータ・ベルナルドだが、その後も女性演奏家の数は決して多くはなく、メンバー全員が女性であることを特徴とした「ラス・タンギスタス」「ラス・タンゲーラス」が目立つ程度だったといってもいいかもしれない。しかし近年、歌手の分野のみならず、演奏家のジャンルでも際立つアーティストが登場し始めた。その中でも「エル・デスキーテ」を率いていたバイオリンのエリカ・ディ・サルボ、ドゥオやキンテートで活躍するピアノのソニア・ポセッティの2人の活躍は目覚ましい(2人ともプロ演奏家の男兄弟がいる点が共通している)。
今回はポセッティの方のアルバムを取り上げる。
ポセッティはオルランド・トリポディやオラシオ・サルガンに師事、ロドルフォ・メデーロスやエルネスト・バッファ、歌手伴奏などの活動を経て、フォルクローレでの活動なども行いつつ、次第にその頭角を現してきた。
自己の名前を冠した最初のアルバムは夫でもあるバイオリン奏者ダミアン・ボロティンとのドゥオによる1998年の EPSA 16019 "Entre nosotros"。2000年末には同じドゥオによる第2弾、EPSA 17170 "Ida y vuelta"を録音、次の展開はどうなるのだろうと注目していた最中、2002年に若手の優秀な演奏家を集めてキンテートを結成、今回晴れてそのグループのデビューアルバムが完成したのだ。ドゥオではタンゴの名曲もかなり取り上げていたが、キンテートのアルバムは全曲がソニア・ポセッティ作の現代タンゴ。いわゆるクアルテート・ティピコの編成(ピアノ、バイオリン、バンドネオン、コントラバス)にバイブラフォン&パーカッション奏者を加えた独自のサウンドを生かしつつ、都会的でクールな、しかし力強い演奏を展開する。これこそタンゴの現在型、と納得出来る意欲が感じられる作品だ。
ソニア・ポセッティのホームページはhttp://www.soniapossetti.com.ar/
文:西村秀人