2003.01.29
Buenos Aires, la reina del Plata, Buenos Aires mi tierra querida,escucha mi cancio'n, que con ella va mi vida...(ブエノスアイレス、ラプラタ川の女王/ブエノスアイレス、我が愛しい故郷/私の歌を聞いておくれ/歌と共に私の人生は行く)
1923 年劇中歌として作られ、1930年タンゴの神様カルロス・ガルデルが歌って有名になったタンゴ、マヌエル・ロメロ作曲、マヌエル・ホベス作詞「ブエノスアイレス」の冒頭部分である。
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスといえば、その音楽はタンゴ。だからブエノスアイレスを称えるタンゴは数多いが、この曲はそのものズバリのタイトルを持っている。「ラプラタ川の女王」という例えはよく使われるものだが、「王」ではなく「女王」なのは都市 ciudad という単語が女性名詞だからだろうか? あるいはヨーロッパ的なエレガンスを象徴したのか? カルロス・ガルデル不朽の名作「我が懐かしのブエノスアイレス」(Mi Buenos Aires querido) 、アスセナ・マイサニ作「ブエノスアイレスの歌」(La cancio'n de Buenos Aires)あたりの方がブエノスアイレス賛歌としては有名かもしれないが、この力強く明るいトーンは経済破綻で落ち込む今のブエノスの人々に必要かもしれない。ストレートで健全な郷土愛に満ちている。
お薦めの演唱は創唱者カルロス・ガルデル(30年)と、賑やかな伴奏をバックにした重厚な語り口のエドムンド・リベーロ(66年)盤。最近あまり取り上げられないようでちょっと寂しい。
さて、今回から連載の形でタンゴを中心に、フォルクローレ、ウルグアイ音楽なども含め、ラプラタ地域の音楽にまつわるさまざまな話題を書いていこうと思う。基本的には筆者の思いつきなので古い話も新しい話も脈略なく登場するはず。どうかお時間のある方は末永くおつき合いを。
文:西村秀人