|
|
| ■ラプラタ音楽雑記帳 por CHORIPAN -04/4/4 |
CD: Discos CNR21603(Argentina) "Caceres - Sudacas" (2004) 1980年代の後半、私がちょうどタンゴを聞き始めた頃、パリで録音されたアルゼンチン・タンゴの印象的なLPがあった。1910年代からパリに流入したタンゴはじわじわと根を張り、1920年代半ばからパリが戦火に巻き込まれる1939年までタンゴは栄華を誇った。戦後その流れはコンチネンタル・タンゴや、アルゼンチン・スタイルで活動する一握りの楽団という形で残るわけだが、そのLPの音楽はそれらの流れとは無縁のものだった。いわゆるアストル・ピアソラ的な現代性をもった演奏だったからだけでなく、「亡命」という新たなキーワードがそこにはあった。LPのタイトルはズバリ「ブエノスアイレス」、グループ名は「ゴタン」、パリ在住のアルゼンチン人によるキンテートで、そのピアノを担当していたのがフアン・カルロス・カセレスであった。 カセレスは1968年5月にパリにやってきた。現在パリで活動するアルゼンチン人音楽家の中では非常に早い時期の移住である。ピアノや作曲のみならず、渋い声で歌を歌い、トロンボーンを吹き、画家としても一流の存在である。これまでに8枚のアルバムを発表したとのことだが、私の手元にあるのは以下のCD。(1枚目は前述のLPのCD化) -それは1970年のこと。飛行機で、船で、あるいは泳いでアルゼンチン人、ウルグアイ人、チリ人亡命者がスペインにやってきて留まり、彼らは「スダカス」と呼ばれた。その理由は千差万別、しかしその手に希望を持ってヨーロッパまで足を伸ばしたのは皆同じ… 他にも本格的なカンドンベ調、メランコリックなワルツ、サックスを入れジャズやブラジル音楽のテイストを加えた曲もある。でもすべてに通じるのは祖国を長く離れたアルティスタが得ることの出来た自由な発想と、その引き換えに背負わざるを得なかった郷愁。 ブエノスアイレスから遠く離れ、軍政下の祖国への想いをピアソラ流の現代タンゴに託してから約20年。タンゴのルーツの再生産に自己のアイデンティティを見出したカセレス。そこにフランス音楽の影は微塵もないが、「生まれ故郷を他者の視点から見る」という作業のために「パリ」という場所は欠かせなかったにちがいない。 |
|