●#024 センスが光るジャズとカンドンベの一期一会●
CD:EL CHOZNO RECORDS ECR0003 "Nehuen / LITO EPUMER" ブエノスアイレスにはジャズを中心に活躍しているが、時にはロック、モダン・フォルクローレ、モダン・タンゴなどの録音に参加したり、それらの音楽を自然に融合させたユニークな音楽性を持つも多才なミュージシャンたちがいる。今回紹介するリト・エプメールもそんな一人と言えるだろう。 リトは、今年の6月30日に急逝してしまったギタリスト・歌手のマリア・ガブリエラ・エプメールの兄弟。二人のおじいさんはタンゴ黄金時代の名歌手アグスティン・マガルディの専属伴奏ギタリストを7年間もつとめた名手フアン・スプメール
(Juan Spumer、おそらく"S"を「エス」と読ませていたので、後に「ス」の音が取れて孫の代には Epumerになったのだろうと想像する)。リトもギター奏者で、今回のアルバムは、1992年の
"Lito Epumer"、1995年の "Pasaje La Balnqueada"に続く3枚目となるもの。前の2枚は聴く機会を得ていないが、曲目を見る限りはかなりジャズ寄りの雰囲気。今回のアルバムも全体のトーンはジャズっぽいが、カンドンベ調の曲が3曲あって、それが実にかっこよく決まっている。 実はリトは1990年の"Las
aventuras de Ruben & Litto Nebbia"、1991年の"Terapia de murga / Ruben
Rada"と、ウルグアイのカンドンベ・マスターであるルベン・ラダの2枚のアルバムにゲスト参加したことがあり、おそらくはその経緯でカンドンベを取り上げたのではないかと思う。その証拠と言えるのが今回のアルバムの3曲目に収録されたルベン・ラダの作「ガルデルのためのカンドンベ」で、インストゥルメンタルの快演である。 冒頭に収められたもう1曲のカンドンベ「カンドンビーニョ」(Candombinho)も素晴らしい演奏だが、この作曲者が何と先日小松亮太=ビクトル・ラバジェンの日本公演のため来日したピアニスト、アベル・ロガンティーニ
Abel Rogantiniなのだ。ロガンティーニはこのCDの全曲に参加、日本公演でのタンゴ演奏における「縁の下の力持ち」的なスタイルとは一味違う、シャープでジャジィなセンスあふれるところを聞かせている(それでも出過ぎないところは非常に彼らしい)。もう一人このアルバムで光っているのがアコーディオンのファウスト・ベカロッシ
Fausto Beccalossi。アコーディオンという楽器はジャズっぽい文脈では使いにくい楽器だと思うのだが、今回の音楽にはリトラルの要素やブラジル音楽の要素もあるので、うまくマッチしている。 7曲目には人気者ペドロ・アスナールが参加してカーハを叩きながらバグアラ調の歌を歌うが、これはちょっとアルバムの流れから外れている感じ。 それはともかく、リトの中に吸収されている自然な音楽の塊が洗練された形であふれだしている、ジャケットの絵そのままの爽やかなアルバムである。
|