●#009 世界のタンゴ:
オランダのタンゲーロたち●
この2〜3月にブエノスアイレスに行ってきたことは前回も書いたが、今回はタンゴ・フェスティバルの開催中ということもあり、隣国ブラジルやアメリカ・ヨーロッパからの観光客も多かった。しかしさらに目立ったのはフェスティバルの目玉であるタンゴ・ダンスの世界チャンピオンシップに非常に多くの海外からの参加者があったことだ。主催者側の招待もあったようだが、私が見た範囲だけでもコロンビア、ドイツ、オランダ、ハンガリー、日本のペアが出場していた。歌・演奏の方ではブエノスアイレス在住の日本人歌手とピアニストが出演していたし、オルケスタ・エスクエラ・デル・タンゴ(「タンゴ学校オーケストラ」)にもベルギー、アメリカ、ドイツからの留学生が参加していた。 タンゴは1920年代以来ヨーロッパを起点として、世界的な流行を果たした。その時蒔かれた種はのちにコンチネンタル・タンゴや社交ダンスのタンゴに発展するわけだが、それとは別に1980年代の中頃からアルゼンチン・スタイルを目指す欧米人も増加していく。軍事政権下で亡命生活を送ったアーティストやさまざまな海外公演もそれを支える形となり、ブロードウェイ・ショウ「タンゴ・アルヘンティーノ」のヒットもあって一気に本場の行き方に関心が高まったのだ。 その結果ヨーロッパを中心に数多くの「本格的」アルゼンチン・タンゴを演奏するグループが出現する。その中でも早くから充実した演奏を続けて際立っていたのがオランダのセステート・カンジェンゲ。現在までに8点の関連CDを出している。
(1)
CBS 466737 2 "Tango Cuatro" (1990) (2) LUCHO 7701-2 "Sexteto
Canyengue...por el tango" (1992) (3) LUCHO 7711-2 "Tiburonero"
(1993) (4) LUCHO 7720-2 "Piazzolla bien canyengue" (1995) (5)
自主制作 TdH 1997-1 "Tangueros de Holanda" (1997) (6) 自主制作 CT 1998-2
"Cinco Tangos de Astor Piazzolla" (1998) (7) 自主制作 TM 2000-3 "Tango
Maxima" (2000) (8) PentaTone classics 472318-2 "Tango Royal / Carel
Kraayenhof" (2002) (1)はセステート・カンジェンゲのプロトタイプとなった四重奏、(2)-(7)はセステート・カンジェンゲのアルバムで、(8)はリーダー、クライェンホフがセステート・カンジェンゲおよび室内楽オーケストラとの共演で制作したもの。「カンジェンゲ」とはタンゴのダンスのスタイルや楽器の演奏法などの形容に用いられる語で「場末っぽい」「荒っぽい」「昔のタンゴっぽい」などのニュアンスを伝える言葉である。 (8)のタイトルが"Tango
Royal"になっているのは2002年2月オランダ皇太子ウィレム・アレクサンダー氏とアルゼンチンのマキシマ・ソレギエタ女史の結婚式が行われ、その会場で「アディオス・ノニーノ」を演奏したのがクライェンホフだったことにちなんだのだろう。オランダではこれをきっかけに「アディオス・ノニーノ」がちょっとしたヒット曲になったというが、ピアソラが遠く離れたアメリカで父の死を知って作った曲なので、必ずしも結婚式向きの曲とはいえないのだが...。
(7)のタイトル "Tango Maxima"とクライェンホフ作曲のCD収録曲"Maxima"もソレギエタ女史に捧げられたものだろう。 セステート・カンジェンゲの諸アルバムは、本格的なタンゴ演奏が「血筋」の問題ではなく、「学習」でも充分成り立つことを証明している。
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